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【マナーズサウンドコラム】残酷と絶望の狭間を彷徨う刹那の美学

マナーズサウンドコラムVol.10:残酷と絶望の狭間を彷徨う刹那の美学

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永遠の


 彼女の瞳からこぼれ流れたひと筋の液体は氷上に滴(したた)り、瞬時にして氷結し、彼女から「希望」を剥奪したアイスリンクの氷と同化した。彼女の悲しみの記憶が曖昧な思い出としてではなく、物質としてリンクに刻まれた瞬間だ。その氷が解凍されるまで、高木菜那の涙は蒸発することなく、美しいまま永遠(とわ)に保存され伝説となる。
 金メダル目前での転倒。しかし、それはむしろ2022北京大会において、「最も美しい光景」だった、と言い換えることができるのではないだろうか。
「歓喜」と「絶望」は常に薄氷の上で踊る。人は届きそうで届かないものに「諦め」と「期待」を模索する。遠心力に煽られて、フェンスに激突するまでの、0コンマ00秒を競う氷上で、肉体の制御を喪失した彼女はいったい何を感じたのだろうか?
 慢心でも油断でも、ましてや彼女の筋肉の限界でもない。四年間、1460日、1億2000万秒を超える壮絶な作品の最後の1ページははからずや「残酷」という二文字で刻まれた。だからこそ「最も悲しい」ものではなく「最も美しい」ものであるべきなのだ。

 パシュート。3人の競技者が女子2400m(400mリンク4周)、男子3200m(同6周)のスピードを競うタイムトライアル。先頭を滑る競技者が受ける空気抵抗による体力の低下を計算しながら、3人の競技者が入れ替わり先頭に立つ団体競技。技量、力量に加え、机上ではなく走行中に五感から得る情報、すなわち自身のスピードと空気の圧力、氷の摩擦、精神状態を加味した力学、物理学、精神分析をスーパーコンピュータが弾き出すよりも速く脳が解析してシューズのエッジに伝達する頭脳の競技でもある。

 競走相手とスタート時点が異なるため、相手のとの差を見極めるのも直線に入った0コンマの瞬間でしかない。3分にも満たない凝縮されたレースだからこそ、カーブでかかる遠心力による負荷(重力加速度=G、ジェットコースターなどで経験する急激な速度変化)は内臓、特に心臓を急激に圧迫し、すべての臓器に尋常でないダメージを与える。そのために、通常の脚力と腕力の他に内臓筋肉の強化も必要とされる過酷なレースである。2000年より始まって歴史浅の競技だが日本女子チームはトリノ4位、バンクーバー2位、ソチ4位、平昌1位と世界トップクラスの実績を誇る。強さの理由は、自我を抑え、他者との共鳴を最重要視できる日本人特有の精神競技だからこそだと想像する。

 北京大会の日本女子代表選手は高木美帆、高木菜那、佐藤綾乃、押切美沙紀の4名。超人・高木美帆の姉、菜那はソチ、平昌に続く3大会連続の出場、前大会の平昌ではパシュートと5000mマススタートでの2種目の金メダリストである。いわゆる絶対王者、優勝して当たり前の日本チームだっただけに、誰よりも悔しい思いをしたのは転倒した高木菜那本人であったことは間違いない。
 しかし何故だろうか、最終コーナーで横滑りしながらラバーフェンスに激突する「ドス」という不愉快な衝撃音は不快ではなく彼女の背中を優しく保護する母の両手のぬくもりさえ伝わってきた。

菜那の周波数


 ここからはマナーズ博士が発見された周波数という事実を、著者の主観(想像)で高木菜那選手の3分04秒47のレースに当てはめてみました。心理状態を言語で正確に表現することは、たとえそれが当事者であったとしても、およそ三割が限界とされています。つまりそれだけしか地球上に言葉が存在しないから足りないのです。しかし、それを当事者が発する、あるいは関連するすべてのものから受ける周波数から分析したらどんな結果が出るのだろうか?あくまでも想像ですが、いつの日か、瞬時に変化する肉体と精神の状態の周波数を測定できる術ができたなら、人類はまたひとつ、人生の呵責を克服できるのかも知れません。

 菜那選手の転倒によるフェンスとの激突は時速約60〜80kmで背中から自動車に跳ねられたと想像してください。相手が鉄なら死亡してもおかしくないほどの衝撃です(実際に亡くなられた選手も過去におりました)。しかし化学の進歩で衝撃を最大限に吸収するラバーフェンスで彼女は保護されました。このラバー、及びその時に発生した衝撃音は 417 Hzだと想像します。この周波数の特徴は、『予期せぬ状況から訪れる恐怖を取り除く』という精神に安定を与える愛の周波数のひとつです。

 ではコマをひとつ前のシーンに戻してみます。菜那選手が最終コーナーでバランスを崩し、制御不能に陥ちいった場面の表情はまさに恐怖と絶望が混じり合った不安そのものようでした。
 この時、彼女の脳内(精神)ではいったい何が起こっていたのでしょうか?

 2017年11月20日に、筑波大学、金沢大学、新潟大学、理化学研究所などの共同研究グループが、恐怖時における脳内ではあるホルモンが急激に分泌されるというメカニズムを発見した、と研究結果を発表しました。
 そのホルモンとは『オレキシン』で、これは睡眠と覚醒、食欲の制御力に関わる脳内物質ですが、さらに情動と関連して『恐怖や危険を感じる状況ではオレキシンニューロン』が活発化するという性質がある、とのことでした。

 ニューロン(neuron)とはすなわち神経を構成する役割で、情報の処理と伝達を司る細胞でチェーンが繋がったような樹状突起でヒト科には100億から1000億程度あるそうです。この数が人間の「情緒」とか「喜怒哀楽」の個人差を決めているのではないか、とも言われています。
 ではオレキシンの周波数はいったいどれほどのものなのか?

 2020年4月21日に、名古屋大学環境医学研究所は睡眠時のマウス実験ではありますが、オレキシンニューロンの周波数が1〜5Hz(デルタ波)、6〜10Hz(ジータ波)であることを突き止めました。これは睡眠障害の治療のための研究で、不安のメカニズムとホルモンの関係を研究したもので、マウスが悪夢を見たり、不安を感じたかは不明ですが、何らかのストレスを与えられたことは事実です。この研究結果が直接、菜那選手がバランスを崩した時の精神状態と直結するとは言い切れませんが、逆に無縁とも断言できません。

 では、そんなホルモンはどこにあるのだろうか?2021年12月15日に更新された金沢大学医薬保健研究チームのHPによると、オレキシンニューロンが局在するのは視床下部だそうです。
 なるほど、これで過食、拒食などの摂食障害が、いわゆる精神障害というよりはホルモンのバランスにつまづいただけの免疫的な障害であり、薬物に依存せずに自己免疫力(正常なホルモンの分泌)で克服できるというメカニズムに結びつきました。

 マナーズサウンド音響振動療法では視床下部は最も重要とされる部位で、チャクラの6番(眉間)と7番(頭頂)に正常な周波数を流し、精神と肉体におけるバランスを整える作業(療法)から始めます。
 不安や恐怖には理由があるものもあれば、ただ漠然としたもの、あるいは過去のトラウマといった多くの要素がありますが、今回の菜那選手の場合は理由が明らかです。
 

信じるか信じないかは・・・、幽霊の周波数


 ここからも高木菜那選手が感じた恐怖と不安が、睡眠障害や摂食障害などによるそれ、すなわちオレキシンニューロと深い関連性があると仮定しての、あくまでも著者の推論です。

 名古屋大学の研究チームによるオレキシンニューロンの周波数が1〜10Kzであるならば、20Kz未満は聞き取れない人類の聴覚で捉えることはできません。人間よりも低周波をキャッチできる犬でも15Kzが限界とされています。聴力に優れているイルカやコウモリも高周波には強いのですが低周波は人間より劣ります。つまりこの周波数を音響として聴くことはできません。

 そこで登場するのが幽霊の存在です。都市伝説では霊が放つ周波数は18・9Kz〜19Kzと言われています。信じるか信じないかはあなた次第です、の世界ですが、著者は個人的に周波数はともかくとして霊は魂ですから日常的に至るところに次元(空間)を変えて存在していると思います。

 人類の聴覚は20Kzが限界と書きましたが、中には17Kzまで聴くことができた人も存在するそうです。例えば犬が見えない何かに向かって異常に吠える光景とか、実際に、あるいは映画やドラマで見たことはありませんか?あれがそうですね。あるいは、まだ自我に目覚める前の子供が大人には見えない誰かと話をしたり、追いかけっこしたりするアレです。ブルース・ウイルス主演の映画『シックスセンス』の世界ですね。つまり17Kzまで聴き取れる人は幽霊と遭遇する機会があるとも言えます。

 それが恐怖の周波数であると仮定するのであればオレキシンニューロンの極めて低い周波数が、菜那選手や、我々が日常的に体験する恐怖と不安の周波数の正体であるのだと推測できます。
 原因がわかれば、治療、克服される道が垣間見えてくるでしょう。

エドワード・バッチ博士とピーター・ガイ・マナーズ博士


 音響振動療法を開発したマナーズ博士(1915〜2009)より一世代前の同じイギリスに薬剤や外科的手術に頼らない自己免疫療法というマナーズ博士と同じ志を持った医師がいました。名をエドワード・バッチ博士(1886〜1936)という外科医であり、細菌学の研究者がいました。
 バッチ博士は自然界に咲く花から抽出したフラワーエッセンス(エネルギー)の組み合わせによる自然療法を開発されました。これを「バッチフラワーレメディ」療法といい、現在も複数のクリニックで導入されています。アロマオイルセラピーもその一種です。

 バッチ博士は「同じ疾病なのに患者の個人的な性格や気の持ち様によって重症化したり回復の度合いが違う」ことに大いなる疑問を持ち、花や植物が持つ自然エネルギーの研究を始めました。著者個人的には中国の漢方医を連想しました。
 このバッチ博士の療法にマナーズ博士も大いに共感しました。マナーズ博士は、自然環境や気候や季節により原材料となる花が入手できない場合を考え、個々の花の周波数を調べたのです。エッセンスはエネルギー体であるため、物質がなくても周波数があれば同じ役割を果たすのです。

 マナーズ公式セラピストの認定を得るために必須のマナーズアカデミーが主催する『セラピスト養成講座』ではバッチフラワーの講義を8時間受講する義務があります。
 ここではタロットカードのようなバッチカードが用意され、○○種類ある中から受講生が無作為に自分で引くのですが、それがどういうわけか、自身の現時点での必要とされるエネルギーと不思議すぎるほど一致するのです。

 例えばの仮定の話ですが、高木菜那選手が引いたと想像するならば、今の彼女なら間違いなく『スィート チェストナット(Sweet Chestnut)』を無造作に選ぶことでしょう。スィート チェストナットが放つエネルギーは『完全な失意、極度の苦悩、暗澹とした絶望からの解放と新たな人生への変容』です。
 396Hzは『罪の意識やトラウマからの解放と恐怖の解消』で、741Hzは『問題を解決する力と 表現力の増進』です。

 現在、この原稿は日本時間2月19日2022年、12時30分に認めていますが、今からちょうど3時間後に北京五輪スピードスケート最終種目、女子マススタートが行われます。競技者全員が同時にスタートして400mトラックを16周、接触転倒も当たり前の氷上格闘レースです。高木菜那選手は前平昌大会の金メダリストです。パシュートのリベンジとかは望みません、彼女自身が納得できるレース(自己の魂を信じる直感力の周波数852 Hz)を期待するだけです。そのためにも奇跡と無限の可能性の周波数528 Hzを心で送りたいと思います。
 
 ちなみにPursuit(パシュート)の競技としての意味は「先頭交代」であって「追い抜き」というカーチェイスを連想させるものではありません。
 しかしそもそもの英語訳では「追いかけ」「追跡」なのです。これはアメリで多発する犯人の追跡にも使いますが「夢」や「真実」などを追求する時にも使います。
 ウイル・スミスの主演の『幸せのちから』(2006年)という感動映画を覚えているでしょうか?
 事業の失敗で破産、絶望のどん底にいた実在の黒人男性が最終的には成功するというノンフィクションですが、あの映画の原文タイトルこそが『The Pursuit of Happyness(原文まま)』なのです。

 あと数時間後には北京の氷上に確実に刻まれる高木菜那のスケートシューズのエッジの刃。テレビでは遠近感が曖昧ですが、あの大きな陸上競技場の400mトラックを想像してみてください。あれを前後左右の競技者と鬩ぎ、ぶつかりながら、時速50kの恐怖の中で16周。著者は新幹線が通過するプラットホームに立つ時のあの恐怖と風圧を連想します。

 悔しくても悲しくても「懸命」の結果の涙は「希望」でしかないという事実をすでに二時間後に迫ったレースが証明してくれるでしょう。

マナーズインターナショナル 安藤貴樹

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